成りすましで悪用!?マイナンバー制度とアメリカのSSN比較

この記事は約6分で読めます。

まずはじめに、2016年1月から制度がスタートするマイナンバー制度の概要について簡単にまとめておきます。

マイナンバー制度が始まる背景

個人番号は12桁、法人番号は13桁の番号が割り振られ、2015年10月から書留郵便で住民票のある住所に届けられます。
こんなに違う!?個人番号と法人番号の違い
ただ日本には住民基本台帳に記載されている住民票コードや運転免許証など既に様々な番号が国民に対して割り振られているのにもかかわらず、なぜこのタイミングで新たな番号を付与する必要があるのでしょう。

この疑問を解く鍵は「IT化」「全国民の所得の”正確な”捕捉」です。

まずIT化という観点から現状を見渡してみると、オンライン上で行う手続きについては公的な本人確認を行う方法がほぼない状態です。
法人登記時やe-taxを利用する際に一部用いられている「公的個人認証サービスの電子署名」がありますが、これは署名対象の文書やデータが”間違いなく署名者により作成された”と保証するだけであり、厳密に本人であることを認証する目的で作られていないため公的認証サービスだけでは不十分といえます。

また、政府側が日本国民の所得を正確に保証する手段も現状ありません。
これは給付金や社会保険料の計算方法を考えてみれば自明ですが、多くの資産を持っていたとしても事業所得がない、またはないように見せかけられた場合は給付の対象になります。
これでは本当に資産もなく生活に困っている人と、資産は多く持っており生活に困ってはいないが単に事業所得がないという人との区別は付きません。
資産の額は劇的に違うのに、給付や社会保障は両者まったく同じ公的サービスを受けられるわけです。

改正マイナンバー法って?

上記のような不公平さを是正するため、2015年9月3日に衆議院本会議でマイナンバー改正法が成立しました。
改正法の概要は下記のとおりです。

[目的]
マイナンバー制度の利用範囲を金融や医療などの分野に広げる
ものすごく簡単にいうと、銀行預金にマイナンバーを関連付けて個人資産の正確な補足をする(!)ことにより、税の徴収漏れや生活保護の不正受給などを防ぐということです。
遠隔地に隠して持っている預金や税金逃れのためにバラして持っている金融資産もぜーんぶ国に筒抜けになります!

そうすることにより、前述した”本当に資産がなく生活に困っている人”だけを抽出できますよね。

税金を支払うのは国民の義務ですから仕方ありませんが、最近の報道を見ているとロクなことに使われていないですよね、税金。
そっちを何とかしていただきたいところです。

ちなみにマイナンバーと銀行口座との紐付けは2018年から任意で、3年後の2021年からは義務化される予定です。

▼今のうちに大切なマイナンバーを安全に低価格で管理したい方はこちら

mngbox01

成りすましによる被害は防げるか!?

防げるのかどうかの結論は制度が始まってみないと分からないので、この記事では政府が何を根拠に「成りすましの心配はない!」と言っているのかを掘り下げてみます。

まず日本のマイナンバー制度のモデルになったといわれている「SSN」について考えてみます。
これはSocialSecurityNumberの頭文字を取っていて、和訳すると「社会保障番号」です。

SSNはアメリカの社会保障番号であり、退職者高齢保険や高齢者や低所得者への医療補助金、失業保険金などを支給してもらうために絶対に必要な番号です。
最初こそ「社会保障番号」という名の下に上記の社会保障に関連する手続きに使われていましたが、その後確定申告などの税金分野、銀行口座やクレジットカードを作る際にも提示をしなければいけなくなったという歴史があります。
何だかマイナンバーを先取りしている感じですね、日本もいずれこうなるでしょう。

ただSSNの最大の問題点は本人確認が緩いということです。

もともとSSNを持っている人は本人に違いないという考えが根底にあったため、確認のときに指紋も本人写真も必要なかったのです。
したがってSSNが提示できるというだけで「はい、本人」と判断してしまっていたのです。

もうお分かりですよね?
これでは成りすますのも異常に簡単で、それに伴う被害も大きな社会問題となっていったのです。

では本題に戻って、日本のマイナンバー制度で成りすましは起こりえるのでしょうか?

まず番号法16条を見てみるとこのように記載されています。

個人番号利用事務等実施者は、第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受けるときは、当該提供をする者から個人番号カード若しくは通知カード及び当該通知カードに記載された事項がその者に係るものであることを証するものとして主務省令で定める書類の提示を受けること又はこれらに代わるべきその者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。(番号法第16条)

要は個人番号を提示されたとしても、さらにそれを提示している人間が本人であるかどうか別に確認をしなくてはいけないということです。

身近な例で言えば、所属している企業に自分の個人番号を提示する際は、通知カード+運転免許証などの写真つきの身分証明書の2点、または顔写真の付いた個人番号カードを提示する必要があります

自分の番号を提示したくないからといって、隣の席の人の個人番号を盗み見て会社へ提示しても「自分のを出しなさい」といって却下されるわけです。

また銀行口座やクレジットカードを作ったり、自分の社会保障情報を参照したい場合も上記と同じ本人確認措置がとられます。
したがって、道に落ちている個人番号カードを持って金融機関や年金事務所に出かけても、持っている人間が本人かどうか厳密な本人確認を受けることになりますので、悪用は非常にしづらいかと思われます。

このなりすましのし辛さが後発である日本の番号制度の利点であるといえます。

インパクト重視!番号法の気になる条文Best5〜前編〜

でも情報は一元管理されるんでしょ?

これまで税金情報は税務署、年金情報は年金事務所など個人の情報はバラバラに管理されてきました。
なので年金の受取や引越しの際の異動届などの手続きが煩雑だったわけです。

ただマイナンバー制度が始まると1つの番号で様々な情報が紐づくので、一般市民が公的手続きを行う過程が簡略化されます。

でも簡単になるのは大いにメリットですけど、もしも個人番号が誰かに知られてしまえばものすごい量の個人情報が一瞬で漏れてしまいそうですよね。

結論から言うと、これまでバラバラに管理されていた情報は引き続き分散して保持されますので、マイナンバー制度が始まったからといって個人の情報が一元的に管理されるということはありません!

ただこれまで縦割りのピーヒャラお役所仕事だったものが、省庁をまたいだ情報の照会が簡単になることにより手続きが効率化できるだけの話です。
税務署の人も個人番号を知っているからといって、別部署の社会保障情報や金融資産の捕捉はできません。

もしも万が一そのようなことを起こしてしまえば、番号法第71条により刑務所へぶち込まれます

まとめ:自分の情報はまず自分で守りましょう。

上記のように政府としてはマイナンバーの利用範囲を制限したり、本人確認を厳格化することで漏洩による悪用を防ぐ努力をしています。
ただ皆さんの個人情報は高く売れますから、虎視眈々と個人情報を狙っている人間や組織は数多くいるはずです。

レンタルビデオ屋でコピーされたり、「お金が還付されます」などの文句に騙されて個人番号を漏らさないように身近なところから自分自身の情報を守っていきましょう!

▼中小企業のためのマイナンバー管理ソフトを作りました!
マイナンバーバナー-01

お問い合わせもお待ちしています。